2007年新春Web 2.0呆談
ベンジャミン(以下ベ)と yomoyomo(以下Y)の与太話。2007年1月2日、居酒屋にて。
Y:あけましておめでとうございます[註1]
ベ:あけましておめでとうございます
Y:2007年になったわけだけど、考えてみると人生の半分以上君と知り合いなんだな
ベ:えっと……15歳のときから?
Y:そう、高一から
ベ:18年……オレの青春を返してよ
Y:別にお前の青春を奪った覚えはないから
ベ:随分とお前の世話をしたよ
Y:逆じゃないの?
ベ:この18年中の10年は俺がお前を世話したね。残りの8年くらいはお前が俺を世話したことにしていいよ
Y:えらく自分に甘いね、君は。まぁ、どっちもどっちというか……(急に我に返って)お前に10年も世話された覚えはないよ![註2]
ベ:それぐらいは世話してると思うよ、客観的に見ても。俺、ちゃんとエクセルで足し引き表作ってるから
Y:お前、人間小さいな
ベ:(話を変えて)いやー、去年は良いクリスマスプレゼントを送ってもらって
Y:えっ? ああ、本か
ベ:タイトルは……『こんにちはマイコン』だったっけ?
Y:(笑)『新しい教科書』のコンピュータ編だよ!
ベ:「炎のコマ」とかの項目があったっけ?
Y:『ゲームセンターあらし』じゃねぇんだから
ベ:すがやみつる著『こんにちはマイコン』知らないの? あれでみんな「あらし」君といっしょに BASIC を勉強したんだよ
Y:知らないねぇ。ワタシも PC-6001mkIISR もってましたけど
ベ:でもまあ、『新しい教科書』は読ませてもらったよ。君からもらった本ではじめて隅から隅まで読んだね
Y:読者のために説明しておくと、ワタシが訳書で必ず謝辞に名前を挙げる人が二人いるんだが、そのうちの一人から以前、「自分は二行読者だから」って言われたの。その意味を聞いたら、「訳者あとがき」で自分の名前が出てくる二行しか読まない、って言うんだよ。それはひどいとお前に愚痴ったら、「いや、実は俺もそうだけど」と言われてダブルショック
ベ:(笑)えーっと、最初が『Wiki Way』だったよね。(レコーダに向かって長崎弁で)「あん時からがんばっとったとよ、こん人も一生懸命にね。そりゃがんばって書きよったとよ」
Y:何語りかけてんだよ
ベ:『Wiki Way』、『ウェブログ・ハンドブック』ときて『デジタル音楽の行方』か。『デジタル音楽の行方』には驚いたね
Y:何で?
ベ:Amazon で検索したら帯(?)のところに佐野元春の推薦文が入ってるじゃない
Y:あのさ、その本、お前に献本したろうが!
ベ:いや、それを見てびっくりして、君からもらったのを引っ張り出して見直して「おおっ」ってね
Y:お前、表紙すらちゃんと見てなかったのかよ! 俺がびっくりだよ
ベ:でも、結局謝辞のとこしか読まなかったんだけど
Y:……『新しい教科書』はためになったんですか?
ベ:面白かったよ。何しろ2006年最大の謎だった「Web 2.0」の意味が分かった
Y:(笑)分かったのかよ
ベ:分かったと思う。そしてあの本の中で一番硬い文章を書いてる人が目の前にいるわけだけど
Y:悪かったな。でもね、あの本でワタシが書いてるのはごく一部だけど、本当に大変な仕事だったんだから。まぁ、何であの仕事を請けたかというと、監修が山形浩生で、他に津田大介さんとか著名な人が何人も書いてるわけ。それに名前を連ねられる機会を逃したくなかったんだな
ベ:「津田の野郎」だっけ?[註3]
Y:違う、それは「八木の野郎」。他にも雑誌『ASCII』元編集長の遠藤諭さんとか
ベ:俺は『マイコンBASICマガジン』派だったけど、すごいんだね君以外は。ところでいやらしい話だけど、今日は君の原稿料で飲んでるわけで――
Y:あのな、お前まだそんな幻想持ってんのかよ。それにね、あの本の刊行記念のトークショーに行った旅費で原稿料なんか吹っ飛んでんの
ベ:じゃあ、ここ俺が出すの〜? えぇ〜。まぁ、Web 2.0 ね、あれは斬新な技術のことかと思ってた
Y:特定の技術だと思ってた?
ベ:それこそ Windows や Mac OS がバージョンアップしていくように、これまでは Web 1.0 の技術をみんな使ってる、と。それが蓋を開けてみたら……あれ「新人類」とか「ガンダムのZ世代」みたいなくくりと同じだろ?
Y:いやー、それはどうだろう
ベ:誰があれ言い出したのよ……ああー、読んだ、読んだ!
Y:お前、何一人で喋りながら思い出してんだよ。ティム・オライリーだよ
ベ:そうそうオライリーの法則。いろんなところでよく使われてるけど、Web2.0って意味が掴みにくい言葉の代表だったよね、2006年の。「今、自分の書いてるブログはウェブ2.0の新技術を使って書いてるのかしら」って勘違いしてる人は絶対いると思うよ
Y:そうかい? ワタシ自身はメンタリティ的に明らかに古い人間なんだけど、Wiki にしろブログにしろ、訳書という形で結果的にそういうのに関われたのは運が良かった
ベ:(半笑い)キミも Web 2.0 的な仕事してるねぇ。Web 2.0 に関わっている人は違うねぇ
Y:なんだ、その舐めた口調は
ベ:だってマシン語とかの一種かと思ってたもん、BASIC から C 言語とかさ。じゃあ、もう Web 2.0 時代なんだから「パーソナル・コンピュータ」という言葉も変えたらどうかね、「パピコン」とかさぁ……そうだ「日本語BASIC」は Web2.0 の先駆けだったんだよ……聞いてるか?
Y:(横を向いている)パソコンという言葉ねぇ
この後しばらく、Apple I がどうしたとか JR-200 がどうしたといった昔話が続く。[註4]
ベ:昔のコンピュータ雑誌とか集めてノスタルジックに浸る雑誌とかあるだけでかなり売れると思うんだけど
Y:昔の『ログイン』とか読んではみたいわな。ヤマログとか
ベ:MZ-80 とか、FM-7 の宣伝に出てたタモリのチラシとか
Y:ああ、そういうのなら集めているサイトあると思うよ
ベ:アスキーが出した『蘇るPC-9801伝説』とか、あれもよかったけど、当時のチラシとかさ実際に見てもしょうもないものなんだろうけど、そうした情報がもっと欲しかった。そういうのをまとめた本を『蘇るPC-○○伝説』みたいに高くなくて1000円程度で実現してほしい
Y:下流社会的ですね
ベ:昔の淡い思い出だからさ。ああいうくーだらねーチラシを穴があくほど見てはどのパソコンを買おうかとか考えてたんだよ。でもガキだから買えたの中古の PC-6601 だったんだけどさ。そういうワクワクをまた蘇らせたいんだよね。スーパーインポーズをやりたかった……
Y:ああ、ワクワクは重要だよね。でも、エロ動画が DVD で15枚分になったというキミは、エロ動画ではワクワクできないんですか?
ベ:いやー、君の iPod とため張れるくらいのハードディスクしかない俺のパソコンだと、DVD に焼かないとやってられないんだよね。ホント大変だった。三日かかった
この後しばらく、ベンジャミンのエロ動画の整理話が続く。
Y:そういえば『エロの敵』という面白い本があるんで、今度貸しましょう。それはともかく、YAMDAS Project も今年で丸八年、九年目に突入するんですが
ベ:設立には俺も随分協力したからね
Y:ほぅ、大きく出たね
ベ:あのさ、ここの読者みんな知ってるのかな? これ言っていいのか分からないんだけど、YAMDAS は八年前から編集長としての俺がいて、市民執筆者のキミがいたという
Y:ああ、実はワタシって市民記者だったんですね(笑)
ベ:まぁ、俺は名ばかりの編集長なんだけど
Y:ベンジャミン君は鳥越俊太郎だったわけだ
ベ:まあね(謙遜)。たまに「俺で YAMDAS Project は持っている」とか言うと、なぜかキミがキレたじゃない。なぜか分からないんだけど
Y:(笑)お前なぁ
ベ:俺としては「えっ、何でキレるの?」と思ってね。「ちゃんと原稿料払っているのになぁ」って
Y:ああ、文章には原稿料が出てたんですか、実は(笑)
ベ:まぁ、生ビールという形ではあるけどね、不満なら月間賞、いや8年間の編集長賞をあげよう、音羽記者
Y:○○○呼ばわりかよ!
ベ:まぁ、当時から俺らは Web 2.0 を実践してたんだな
Y:どこがだよ!
ベ:あれだよ、あれ、ベータ版! ベータ版!
Y:(笑い転げる)何知った言葉並べてんだよ。でもな、何度も言うように俺は最初複数人でサイトやりたかったんだよね
ベ:でも、海坊主なんて最近全然出てこないじゃん[註5]
Y:彼はもう家庭的な幸福を手に入れたんだよ
ベ:俺も実は最初から参加しようかと思ったんだけど、最初公開されたお前の文章がやけに高尚というか硬かったから止めたんだ
Y:最初、お前からきっぱり参加を断られたときはショックだったね
ベ:二年目くらいかな……文章が柔らかくなったんだよね。最初はお前が二十数年分溜め込んだものを晴らしている感じで。だから最初の頃、君に「こんなの書いていいの?」って聞いてたじゃない。君は「俺が書きたいんだから」という感じで突っぱねてたけど
Y:そんな当時は突っ張らがっていましたか
ベ:宗教ネタで読者と喧嘩するし
Y:懐かしいですね。まぁ、最初の三年間、1999年から2001年までに書いたものはひとつ残らずゴミですけど
ベ:あれから変わったよね。今じゃこのサイトも君も Web 2.0 だし
Y:(笑)どこがだよ。でもそれもバズワードとして消費され尽くした感じで――
ベ:でも、一般の人で Web2.0 の意味を理解している人はまだまだ少ないんじゃないの?
Y:言葉の意味など知らなくても、意識することなくそうした技術を当たり前のように享受できればそれでいいじゃない
ベ:でも、特定の技術じゃないんだろ? トラックバックができるのが Web 2.0 なのか? ブクマができるのが Web 2.0 か?
Y:全然違うわい(笑)でも、お前から「ブクマ」なんて言葉を聞くなんて恐ろしいね。あなた、はてなダイアリーとかやります?
ベ:全然やんない。
Y:ワタシもやってほしくないね。君がやると炎上しそうだし
ベ:なんか全然興味がない。あのはてなダイアリーさ、単語一個一個にリンクがはってあって読みにくくて仕方がない
Y:ああ、うちの場合はスタイルシートで目立たなくしてるけど
ベ:スタイルシートでもカーボンシートでも何でもいいんだけど、あれ自動でなるの?
Y:まぁ、自動だね。回避の仕方はあるけど
ベ:あれは俺の知ってる Web 2.0 じゃねえ!
Y:あのな(笑)認定委員会があるわけじゃねぇんだから
ベ:ほりえもんは Web 1.0 で、藤田晋は Web 2.0 か?
Y:何じゃそりゃ。そういえばもうすぐほりえもんの判決出るのかな?
ベ:誰かが言ってたな、「堀江の話を居酒屋でできるかどうかで世代が分かる」って。飲み屋で「堀江さんはボクらの憧れです、堀江さんなら新しい時代を切り開いてくれます!」とか言う若造にむかついた俺の気持ちにもなれよ
Y:知るか。そういえば、彼が逮捕されたとき The Beaten Generation という文章を書いたんだけど。大体さ、お前と一度世代論で対談しようって言ったのにお前が煮え切らないから流れたんだよな
ベ:違うよ。確かにお前はあの文章書いたけど、あれの最初に書いてたように、世代論でくくるのは嫌いだってずっと言ってたじゃない
Y:おお、ちゃんと俺の文章読んでんだ(笑)
ベ:俺はもっと前から団塊の世代への愚痴とかさ、世代論をいろいろ話してたけど、お前は「そんな世代で括るのは好きじゃない」ってその度に文句言ってたんだよ。だから、今更対談言われてもできるかって断ったの
Y:……それは俺のほうに非があるかも
ベ:だからお前が The Beaten Generation 書いたとき、俺「お前、俺にはああ言ってたくせに(世代論)書いたじゃん」って言ったじゃない
Y:……この件に関しては、多分僕が悪いね(笑)
ベ:もっとくだらない話とか対談でやるべきと思うんだよ。今回みたいな話だって硬いんだよ、きっと。でも、それがやりにくくなっているのが、俺も君も年を取った証拠ということかな。18年経って大人になったね
Y:でも、今回は十分くだらないと思うよ
[註1] もうアレを言わない程度の分別はついた。
[註2] このときは「お前の世話になった覚えはねぇ!」ぐらいの勢いだったが、よくよく考えてみれば、随分と彼には世話になっている。ワタシもかなり自己中心的だ。
[註3] 津田さん、間違えて申し訳ありませんでした(ベンジャミン談)
[註4] このあたりで既にかなりアルコールが入っているので、二人の会話の無茶度が上がってきます。
[註5] 実は未だにベンジャミンとより海坊主とやった対談の方が多いのである